暗示の話

暗示の話1


もう賢明な読者の皆さんはお気づきのことでしょうが、メスメルの治療はけっして動物磁気などによるものではなく、暗示の力が作用した結果です。メスメルが強力な自信を持って治療に臨めたのは、自分にはとてつもない磁気が備わっているという自己暗示によるものでした。

また、患者のほうも、メスメル先生というすごいお医者さんにかかれば病気が治る、という暗示が働いて、奇跡的な治癒がもたらされたのです。

このことはメスメルも患者側も知るよしはありませんでした。まさに、信じるものは救われるということです。

さて、催眠と暗示は切っても切れない関係にあります。催眠を誘導するのに暗示が使われるし、催眠状態に入ったら今度は治療のための暗示が与えられます。しかし、暗示というのは何も催眠だけの特許ではありません。日常生活の中でいくらでも暗示は使われているものです。

小さな子供が転んだり、ものにぶつかったりすると痛いものだから大きな声を張り上げて泣き出したりしますが、その時お母さんが「痛いの痛いの飛んでけー」とか「ちちんぷいぷい」などと声をかけてあげると、子供は案外と簡単に泣きやんでケロっとしてしまうものです。これはお母さんの言葉が立派な暗示として効き目を発揮したわけです(一昔前のお母さんだと、「親のつば、親のつば」と言って痛む部分につばを塗ってあげたそうです)。

でも、これを大人にやっても効きません。頭が痛い、歯が痛いと辛そうな顔をしている人に「痛いの痛いの飛んでけー」とやっても白い目で見られるだけです。これは大人には子供と違って批判力があるからです。そんなもの効くわけがないと理性で判断するわけです。

しかし、そういう大人でもいくらでも暗示にかかったりします。たとえば、ドリンク剤を飲んだ途端にそれまでぐたーっとしていた人が急にしゃきっとしたりします。確かにドリンク剤の中には元気が出る成分が入っているのでしょうが、飲んだ途端に効くはずはありません。それが飲めばすぐに元気になれるというのは、飲んだから大丈夫という暗示にかかっているということです。

ドリンク剤の場合は暗示がよいほうに作用しているのですが、悪い方に作用する暗示もあります。たとえば、あがり症の人がスピーチや発表をする前に「あがったらどうしよう」とか「今日こそはあがらないようにしよう」と心の中で思ったりしますが、これは実は「自分はあがる」という自己暗示をしているのと同じことなのです。そして、たいがいの場合、その暗示の通りあがってしまう羽目になってしまうのです。

催眠療法 池袋YM心理センター 催眠療法 池袋YM心理センター